大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(あ)1076 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人谷中治、同広瀬通の上告趣意について。

しかし、原審公判調書によれば「弁護人は控訴趣意書(昭和二五年三月九日附)

に基き陳述し、なお参考として領収書一通(同年同月五日附)を提出した」とある

だけで、控訴趣意書には所論弁償の事実は少しも記載されていないから、原控訴審

でその弁償を為した旨の主張とこれを立証する証拠として所論領収書の取調を請求

した事実は認めることができない。されば、原判決は、右の点について何等判断を

示していないし、また、これを示さなかつたことも当然であるといわなければなら

ない。従つて、所論は、刑訴四〇五条一号に当らないし、また、同条二号又は三号

の判例と相反する判断をした場合にも当らないこと明らかである。しかのみならず、

元来弁償の事実は、事実審の裁量に属する量刑に関する情状の一つに過ぎないもの

であつて、法律上当然刑の減軽を来す事由ではなく、従つて、財産犯において弁償

をしたからといつて、その犯情の如何を問わず常に刑の量定の不当を証するため欠

くことができない場合に当るともいえないから、原審には取り調ぶべき証拠を取り

調べなかつた違法があるともいえない。それ故、本件においては、刑訴四一一条を

適用すべきものとも認められない。

よつて同四〇八条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和二五年一二月二一日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 齋 藤 悠 輔

裁決官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 岩 松 三 郎

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